インハウスへの回帰


この違いはどの辺からきているかというと、結局のところ雇用流動性だ。米国では要らない社員をいつでも切れるから、プロジェクトの中核には技術を分かった人間をインハウスで採る。そういう連中を必要に応じて雇える労働市場の厚みがあり、要らなくなったらクビにしても問題ない。
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これは重要な指摘だと思います。

昔は、コンピュータシステムというのはメインフレーム上でCOBOLを動かすものであったわけです。この頃は日本でもユーザ企業さんがインハウスで開発要員を抱えるのが結構当たり前でした。なぜなら、技術の幅が(メインフレームCOBOLと)狭く、インハウス要員でも十分対応できたからです。

それが、「オープン化」の進展により、技術の幅が非常に広くなり、インハウス要員ではすべての技術に対応できなくなってきて、ユーザ企業は自前での開発力を失い、外部資源(SIer)に頼らざるを得なくなった、というのが現状と思います。

ここで、超個人的な感覚なんですが、このメインフレームの「古き時代」は、日本の(エンタープライズ)コンピューティングは、海外より優れていたのでは、と思います。
現在でもメインフレームを使用しているところというと、まず「銀行」が思い浮かびますが、はっきり言ってアメリカの銀行のシステムはひどいものです(http://www.chikawatanabe.com/blog/2005/01/post_6.html など参照)。日本の銀行のシステム(特にリテール向け)はかなり優秀と思います。

また、製造業の生産システムも、いまだメインフレームが幅を利かせている分野でしょう。日本の製造業の強力な競争力を支える要因の一部に、手に馴染むよう作りこまれた生産システムがあると思います。多くの企業で、生産システムをERPに乗せ変えようとして大失敗をしていますが(失敗事例はあまり表に出てこないものですが、ここだけの話ほんと多いです)、これは逆説的にメインフレーム上で作りこまれたシステムの優秀さを示しているものと思います。

ちょっと前に、製造業の海外進出がブームになりましたが、今は逆に国内回帰の動きが進んでいます(http://www.asahi.com/money/topics/TKY200410170064.html など参照)。何事も行き過ぎには必ずゆり戻しが来るものです。システムも内作回帰の動きがあってもよいと思います。何より、アジャイル的手法を開発に取り入れようとすると、契約の問題がどうしてもネックになりますが、それを根本から解決するには、ユーザ企業がIT技術者を抱えて内作するのが一番手っ取り早いです。

アジャイルの「武器」は Seasar2 でも S2Struts でも Ruby on Rails でも何でもいいと思いますが、せっかくIT技術者とユーザを近づけることができる「武器」が世に出てきているのですから、ユーザ企業も武器を手に取るべきだと思います。


プログラミングは、プロだけのものであっちゃいけない。だって、エンジニアはユーザーと話をして始めて仕事ができる。お互いがお互いを知るためには、エンジニアは業務を学ぶべきだけど、ユーザーは技術を学ぶべきだと思う。そして学んだ技術で、その先を考える。
Groovin' High:ユーザーよ武器をとれ - livedoor Blog(ブログ)