保険と宝くじの経済学


宝くじが「非論理的な行動」であるなら、保険も「非論理的な行動」であるはずです。
で。
この「非論理的な行動」は効用逓減の法則で説明できるかと思います。

いえ、そうは思いません。限界効用逓減則では、保険は説明できるが宝くじは説明できないと思います。
純化のために、以下のように定義します。

  • 私は、今 100ゴールド(以下 G)持っています。
  • 「保険」は 10G で、8% の確率で起こる「災害」の損害を完全にカバーしてくれます。
  • 「災害」が起こると、100G を失います。
  • 「宝くじ」は、1Gで、0.001% の確率で当選し、当選金額は 8万G です。
  • 「幸せ度」は、所持金の平方根で表されます。(限界効用逓減則より)

このとき、お金の期待値は、計算すればわかるとおり、「保険」も「宝くじ」も、購入金額の 80% しか戻って来ません。胴元は大数の法則で儲けを出すことができるでしょう。

しかし、これを効用で考えると、

【保険のケース】

  • 保険を買ったとき
    • 災害が起こる起こらないに関わらず、所持金は 90G となるので、幸せ度は 約9.49
  • 保険を買わなかったとき
    • 災害が起こらなかったとき 所持金 100G なので、幸せ度は 10
    • 災害が起こったとき 所持金 0G なので、幸せ度は 0
    • なので、幸せ度の期待値は、10×0.92+0×0.08 = 9.20

つまり、保険を買ったほうが幸せになれます。


【宝くじのケース】

  • 宝くじを買ったとき
    • 当選したとき 所持金は 79999G なので、幸せ度は 約282.9
    • 当選しなかったとき 所持金 99G なので、幸せ度は 約9.950
    • なので、幸せ度の期待値は、282.9×0.00001+9.950×0.99999 = 約0.9953
  • 宝くじを買わなかったとき
    • 所持金は 100G なので、幸せ度は 10

なので、宝くじを買わないほうが幸せになれます。

今は宝くじの胴元が20%取る(80%還元)計算でしたが、例えこれが0%(100%還元)でも、やはり宝くじの効用の期待値はマイナスになります。

じゃあ、なぜ人は宝くじを買うの? という疑問については、以下のリンクが参考になるかと思います。
投資における心理学 行動ファイナンス入門