「卒業証書を渡さない」ことは違法か?

http://blog.goo.ne.jp/chemist_at_univ/e/0971628746c874cc5995fa0a2827aab7
http://www.cml-office.org/archive/1235922929284.html
http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20090304/p1

あたりに関連して。


授業料未納の生徒に対して、卒業証書を渡さないことは違法かどうか検討してみる。
少なくとも「島根県立高等学校等条例」には根拠は無いようです。しかし、学校側は民法上の留置権を主張できるのではないでしょうか?



民法第295条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。


問題になりそうなのは、授業料が「その物(=卒業証書)に関して生じた債権」と認められるかどうか(牽連性)ですが、



債権と物との牽連性という要件はどういうことになるでしょうか。
もうお分かりですよね。
簡単に言えば、物を留置することによって、相手方に弁済を促すことができる関係にあるということです。
そのような関係がある場合に、債権と物との牽連性という要件を充たすことになります。

にあるような原理原則から言えば認められるべきなのでしょう。*1


3/10追記:

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200903/2009030700392
http://sankei.jp.msn.com/life/education/090307/edc0903071911002-n1.htm
http://mainichi.jp/life/today/news/20090310ddm041040105000c.html

あたりの報道を見ると、「一度渡した卒業証書を回収する」という手法をとっているところが多いようですね。
恐らく、「卒業証書を授与しなければならない。」という学校教育法施行規則上の規定があるので一旦卒業証書を授与するけど、その後にそれを留置権に基づき留置する*2という理屈にしているのでしょう。

山口、長野、山梨という別の県で、こういう手法が共通してとられているということは・・・誰かの入れ知恵なのかな? 偶然同じ手法を思いついただけかな?

ということで、


卒業証書を渡さないことの効力がよくわからないのだけど、学校教育法施行規則第58条とその準用規定に「校長は・・・全課程を修了したと認めた者には、卒業証書を授与しなければならない。」と定められているので、卒業証書を渡さないことは全課程を修了したと認めないということだ、と仮に理解しておく。

については、全課程を修了したと認めることになっているのだと思います。


*1:とはいえ、実際裁判になると結構微妙かも、という気も。

*2:この時点で所有者は学生、占有者は学校