フラットなWEBは、「理想郷」か、はたまた「残念」か


もし、仮にそうだとすると、ネットの誹謗中傷揚げ足取りによって、ネットの偉さ格差が是正され、平等化が推し進められると、社会全体の総幸福量は増大することになる。
そして、平等化に向かって進んできた人類の社会システムの進化の歴史は、同時に社会全体の総幸福量を増大させる方向での進化の歴史だったことになる。


ここで我々は歴史を振り返る必要があると思われます。


時は西暦1978年の中国。トウ小平主導の改革開放路線が始まった年。この時点での中国のジニ係数*1は0.18*2。極めて格差の小さい社会でした。藤子不二雄が雑誌「コロコロコミック」で、中国には泥棒がいないから鍵は必要ないというエピソードを語ったのもこの時です。


しかし反面、当時の中国では、サービスの水準は極めて悪いものでした。服務員(店員)は、ちゃんと仕事をしてもしなくても給料は同じだしクビにもならないので、最も楽な仕事の仕方を選ぶのです*3。「服務員 中国 隔世の感」あたりのキーワードでググると当時を知る人の感想がたくさん出てきます。


その後、中国は開放政策で急激な市場化と資本化を推し進め、経済は急速に成長しました。また、服務員の服務の水準も急激に良くなりました。ただ、その反面、ジニ係数は2002年には米国をも上回る0.51まで上昇しています。格差は急激に拡大し、鍵をかけないどころか、中流以上の住宅の窓という窓には鉄格子がはまっているのが現代中国です。


つまり、フラットで、偉さ格差が少なくなった社会では、知的生産の生産性は下がる可能性が高いのです・・・また、おそらく既に現代の日本のWEBはそうなっている可能性も高いと思います。「1978年の中国のような社会」=「今の日本のWEB」でないと誰が言えるでしょう。これを「理想郷」と見るか「残念」と見るかはあなたの価値観次第ではないでしょうか。



*1:社会における所得分配の不平等さを測る指標。0に近いほど格差が少ない状態で、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味する。詳しくは Wikipedia で。

*2:中国のジニ係数は諸説あるのらしいのですが、ここでは以下のサイトの数字を用いています。http://wizkiz.upper.jp/skill/basic/project/gini.shtml

*3:例えば、全ての客の全ての質問に「没有(ありませんの意)」と答える、など