SaaS という罠


また、人月単価商売を考え直さないといよいよ厳しくなってきた。人月モデルはわかりやすいけど、価格競争に弱い。独自性を出しにくい。
(中略)
また、「そもそもシステムを作るっていう発想があれだね」っていうSaaS的な何かで「毎月のランニングだけ頂く」仕組みでスケールしたいと考えると思うのだが、それを加速していくとヒト(技術者)が要らなくなるってことだから、SaaSをやろうとしているSIerも頭が痛いのかもしれない。

SaaS は、最初に仕組みを作るための工数がかかり、それを運用するときはあまり工数がかからない仕組みになります。パッケージ開発も同じです。ですから、「今余っている技術者を使って SaaS の仕組み(orパッケージ)を作っておけば、また不況が終わって技術者リソースが稼働しだしても、SaaS の売り上げは並行してあげられる。」と経営者が考えるのは極めて当然ですし、それ自体は間違いとはいえません。

その上、SaaS(パッケージ)は、開発元のバランスシートに資産として乗ります。逆に言えば、非アサインの技術者を使ってパッケージを作るだけで、(そのパッケージが売れる売れないに関わらず)当期の業績は良くなります。見せかけの業績を良くする手段として、また「流行りだから」といって SaaS に走る会社は今後出てくると思います。

ところで、この2009年の7月20日付けで、債務超過の理由で東証マザーズを上場廃止になった「ネクステック」という会社があります。この会社の業績を見ると、平成20年3月期に、約26億の最終赤字を計上して債務超過に転落しています。この原因を平成20年3月期の有価証券報告書から拾い出してみると、

とあり、債務超過転落の原因の一つが、ソフトウェアパッケージの減損処理であることがわかります。減損処理をするまでは資産になるので、損益は悪くならないというのが罠であり麻薬なのです。甘い考えで、余剰人員を SaaS やパッケージ開発に突っ込んでしまう会社には、突然の債務超過転落、そして死が待っているかもしれません・・・