市場原理が推進する太陽光発電のイノベーション


http://twitter.com/kazu_fujisawa/status/51237901870182400:twitter:detail:left

という tweet が叩かれていたようです。
残念ながら、典型的な「イノベーションのジレンマ」に陥ってしまった例と言えると思います。

まさに、下記の BLOG の記述の通りです。


歴史的に見ると、この流れは、巨大発電所を「メインフレームコンピュータ」、発展途上国太陽電池発電を「PC(キット)」と考えると破壊的イノベーションと言う認識が分かりやすいかもしれない。PCが誕生した頃、メインフレームを作っていた会社は、PCを「おもちゃ」としてみていた。しかし、PCは進化し、価格が下がり、ネットワーク化して、メインフレームの性能を凌駕してしまった。今はおもちゃにしか見られていない太陽電池も、現在の巨大な発電所に対して同じような流れになると言うわけである。

現在、太陽電池の生産量で上位を占めており、価格低下の急先鋒にいるのは、First Solar (NASDAQ: FSLR) や、Q-Cells (FWB: QCE) といったベンチャー企業です。

当時無名で、「PCなんておもちゃを作っている」と言われていた Microsoft (NASDAQ: MSFT)Apple (NASDAQ: AAPL) と言った企業が、パーソナルコンピュータの急激な性能向上と普及により急激に成長していく中で、Wang LaboratoryData GeneralDEC というミニコンメーカーは衰退していきました。
同じことが、原子力発電と太陽光発電でも起きていくのではないかと思います。


このように、新興ベンチャーが急速なイノベーションを牽引してきた背景には、発達した資本市場の存在があります。



First Solar, Inc. は (中略) 設立当初は、そのVCから1億5000万ドル以上の投資支援を受けている。

ベンチャーキャピタルのApax Partnersは前述のQセルズに14億円投資し、同社が2005年に上場した際390億円に上る上場益を得た。

ベンチャーキャピタルによる投資と IPO による巨額な資金調達。このような市場原理とアントレプレナーシップのもとで、スピード感あるイノベーションが起こっているのです。
もちろん、現在の太陽光発電は政府による補助金なしでは成り立ちませんが、特定の技術・業者を補助するのではなく、技術に中立な固定価格買取制度(FIT)を用いることで、競争原理を損なわずに太陽光発電(に限らず再生可能エネルギー全般)は発展してきました。日本でも、4月から非住宅用(=事業用)の買取価格が 24円/kWh → 40円kWh に大幅増額されます。市場は拡大し、さらなるイノベーションが誘発されるでしょう。


もちろん、一点集中型のベンチャーが全てというわけでもなく、日本企業の総合力が生きるときもあるかもしれないと思います。(参考:中田 行彦,「太陽電池産業のターンキー・システムとアーキテクチャ 単モジュール産業における競争戦略」,経営情報学会 全国研究発表大会要旨集, Vol.2010f (2010) pp10
まだまだ、これからが面白い市場だと思います。「男は黙って原子力」と切り捨ててしまうのは残念な姿勢ですね。